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ぼくの地球を守って あらすじ(ネタバレあり)~vol.7~
誰よりも強く故郷を欲している
そしてここは夢に描いた故郷そのもの
その故郷を守るために
人を傷つけ
己も切り裂いていく少年の旅路に
終わりはあるのか
片思いと温度差と
RRRRRRR…
RRRRRRR…
「はい、坂口ですが」
「小椋と申しますが…」
電話を取ったありすの弟は、また小椋って人だぁと、げんなりした。
迅八は進級したタイミングでクラスが別となってしまったありすと、話す機会を作りたいがあまり毎日の様に電話をかけていた。
ムーンドリームの仲間から距離を取りたかったありすは、そのたび居留守を使ったが、今日は輪とデートのため本当に不在だった。
ありすの弟は
迅八が姉に惚れていることを察し、ありすが居ないことを良いことに、姉が普通の恋ができない状況に追い込まれていることを迅八にぶっちゃけた。
べランダからの落下事故を起こした責任を感じて、輪に言われるがままに仕方なく婚約している現状。
「乙女は恋するべきなんです!小椋さん!!姉を救ってやってください!!」
迅八は、ムーンドリームでいうところの秋海棠が木蓮に婚約をせまったことになるという事実に、ありす本人に真相を問いただそうと意気込んだ。
次の日の昼休み、迅八はありすを半ば強引に中庭に呼び出した。
「小林輪と婚約してるっていうのは本当なの?」
「……そう………です……」
迅八は、ありすが好きでもない男(輪)と婚約していることにカッとなり、黙っていられなかった。
「オレ反対だ!!坂口さんが自分を犠牲にして自分の気の済むようにしてるだけで誠意とは違う。婚約はお互いが好き合って成立するもののはずだよな!」
勢い余って告白した。
「オレ、坂口さんが好きだ!勝手なことを言ってるみたいだけど、オレは自分の気持ちには忠実でいたいから反対せずにはいられないんだ!」
ありすは、どんなに迅八の正論を言われたところで、輪に残した心の傷を思うと聞き入れられる余裕がなかった。
迅八は意外と頑固なありすの言動に、たまらず
「あいつは8歳のガキじゃない!中身は秋海棠じゃないか!!」
ムーンドリームを持ち出した。
ありすは言った。
「いいえ!!輪くんは8歳の子供です!!」
自分を木蓮だと思ってムーンドリームに引き戻そうとしてくる迅八に
「自分が木蓮さんだなんてこれっぽっちも思ってません!あたしはただの坂口ありすで、輪くんをベランダから落としたサイテー娘です!!」
と泣きながら言って走り去った。
ー 屋上 ー
迅八は一成に、ありすに告って嫌われた状況を話していた。
一成はイライラした。
ぼくはエンジュなんだぞ。自分の恋バナしやがって…
迅八は、あまりにも玉蘭がすることと同じことをする…。
「よく、このぼくにそんな話を持ち込めるね。迅八。」
ぼくもまた、今世の在り方に困惑するほど前世の人格そのままじゃないか。
一成は真剣に迅八を見つめ
なかば強引なキスをした。
迅八は、おもいっきり一成を突き放し
「やめろよ!遊んでんじゃねーよ!!それとも本気かよっ!!」
言った瞬間後悔した。
「本気なわけないじゃん。バーカ」
言葉とは裏腹な一成の泣き顔を見たその日から、一成は学校に来なくなった。
未来路
田村はSへの手がかりを掴むため、Sが使う特殊なチカラについて知る必要があると感じていた。
そして、常識の範疇を逸脱した能力について、遠い記憶の中に心当たりがあったことを思い出した。
京都に住む昔馴染みの薬師丸の弟。
確かそんな能力があった様な…
思った矢先、薬師丸から電話がかかってきた。
薬師丸は東京の親戚に会う関係でたまたま上京していたタイミングだったが、この偶然は田村にとって奇跡的なほどタイムリーなチャンスだった。
田村は薬師丸の弟の能力について、会って詳しく教えてもらうことにした。
薬師丸はその力をESPだと言った。
弟の場合は米国の団体からスカウトを受けるほど、瞬間移動や空中浮遊も容易いのだという。
そしてその能力について、遺伝とは違う“個人の『生きたい欲求』”に比例して強くなるものではないかという持論を語った。
ー 『生きたい欲求』 ー
田村は、病弱な体であるが故に生きることに必死だった春彦の姿を重ねた。
一通り薬師丸からの話を聞き終わった後、田村は自身の実情を打ち明けた。
「超能力者がからんだイザコザがあってな、どーにも肩すかし喰らうもんでよ」
SのESPによりアバラを3本折られたいきさつを話すと、ことの重大さを受けて薬師丸は直接弟に聞いた方が良いと、京都にいる弟に電話をかけはじめた。
「瞬間移動でこっち来させたる。そこで待っとれや‥。未来路か?ちょっと今から来いや、美味いもん食わしたるから‥」
次の瞬間、振り返ると
「‥なんの用や」
突然の兄からの呼び出しに、若干めんどくさそうな未来路が立っていた。
田村が瞬間移動を目の当たりにするのはこれで2度目だ。
1度目は
目の前にいたはずの春ちゃんが消えた時
そして
この一瞬の隙に京都から東京に移動した未来路
田村は
Sとやり合うための手段と春彦の抱えている問題に、一歩近づいた様な気がした。
その“種”の違い
約束通り美味いもんを食わせる名目で、田村たちは未来路を料亭に連れて来た。
本当の目的は、誰にも聞かせることができない少々込み入った話をするためだ。
田村は未来路に、Sについて自分が知ることの全てを打ち明けた。
未来路は
田村の口から話される言葉と、田村に憑いている守護霊からの情報を受けて
「その少年とは関わり合いにならん方が身のためや」
と、自分なりの答えを出した。
そして、田村がずっと気にしてやまないもう一人について質問した。
「ハルヒコって誰ですか?その人も超能力者ですか?」
田村はまだ何も言っていない春彦のことを未来路に問われてドキッとしたが、否が応でも認めざるをえないESPの能力を目の当たりにし続けたことにより、状況を飲み込んで春彦について話し始めた。
「友人だ‥16歳の。」
「その子のことで、何か変わったことありました?」
田村は春彦が瞬間移動した際の詳細を話すことにした。
「春ちゃんの肩に手を乗っけてたのにフッと消えちまって、俺の手がパタンと下に落ちちまってよ‥」
話を聞いた瞬間、未来路は固まった。
「?‥俺、何か変なこと言ったか?」
未来路だけでなく薬師丸でさえ妙な空気になっていることに、田村は混乱した。
幼い頃から未来路を見てきた薬師丸は
「オレ、そーゆうパターンの瞬間移動って初めて聞くで。そんなすごいことできるやつもおるんかいな」
と、驚きを隠せなかった。
田村だけが何のことやらわかっていない春彦の能力について、考え込んだまま口を開かない未来路に代わって薬師丸が言う。
「普通、そいつの体のどこかに触ってる時に、そいつが瞬間移動した場合は、田村、お前も一緒に移動してまうはずなんやけどな。」
未来路は、ようやく重い口を開いた。
「どうやら‥俺なんかとは種が違うてはる…そいつ…人間ですのん?」
ー 人間ですのん? ー
田村は青ざめた。
が、考えたい優先順位はSへ繋がる手がかりだ。
「俺は…どうにかしてその小学生に会いたいんだが、未来路なら何か方法を心得てるか?」
聞いたところで、さすがの未来路にも分からなかった。
「じゃぁ…じゃあ春ちゃんに会ってもらえないか!?」
たとえ、“種”が違うとしても未来路の何でも見抜くその力を借りて、春彦の胸の内がわかるのではないか?と田村は必死になった。
「無理言わんといてください。母に醤油買うていく約束ですのや」
未来路の生活感溢れる一言に、田村は冷静さを取り戻した。
「すまん無理言って…今日はありがとう。えらい参考になった!」
また今度、ゆっくり話を聞かせてくれ
そうして、この場をおひらきにした。
勇気と願い
春彦の母は、ここのところずっと食欲のない我が子に、“この話”を打ち明けるタイミングに困っていた。
話せばショックを受けるのは目に見えていたが、言わないわけにも行かない内容だった。
「あのね、春彦。田村さん、京都へ行っちゃうんですって」
意を決して伝えた時、母の思惑通りに春彦は取り乱した。
「『行っちゃう』ってどういう意味?どうして!?」
輪から脅迫を受けているタカシが、東京にいることの危険を感じ、京都の高校に転校することになった関係で世話役である田村が保護者代わりとして付きそわなければならなくなった。
説明するのは簡単だ。
難しいのは納得させること。
「仕方ないでしょ?笑って見送りましょう…ね?春彦!」
春彦は走り出し、ドアを乱暴に閉めて出て行ってしまった。
田村は自室で、急遽言い渡された京都行きの事情を綾子に伝えるため電話をしていた。
「だが、すぐ戻る。タカシさえ説得できればこっちに戻れるんだ。」
いつも田村のすることに寛大で、理解が深い彼女の存在にいつも助けられた。
そして今回も。
「お前に頼みたい。綾子、春ちゃんの様子を見てやってくれや、な?」
さすがに堪らず泣いている綾子の様子が気にならない訳ではないが、田村が甘えられる唯一の相手が綾子だった。
電話を切ったその時
田村の目の前に春彦が現れた。
「田村さん。本当なの…?京都へ行くって…」
心の支えである田村が遠い場所へ行ってしまう…そう思った時、春彦は我を失って田村の居場所に瞬間移動していた。
田村は驚きもせず
「そうなんだよ春ちゃん。だがすぐ戻る」
と断言した。
そして
打ち明け話をした。
以前、春彦の部屋に入った時、宇宙、地球、別の姿の春彦を見たこと。
「俺は君にどうやら同調するらしい。あの目は春ちゃんの持つ瞳と同じだった。」
別人で別人じゃない
俺は会えたんだ
もう一人の春ちゃんに
京都に行けば、未来路がいる。
よりいっそうSについて分かることもあるだろう。
「春ちゃん俺は、もっと強くなって帰ろうと思う。だから春ちゃんも新しい勇気胸いっぱいに蓄えといてくれ、な!」
春彦のがんじがらめだった胸の奥が、ゆっくりほぐれていく。
田村さんの様に、強く…強くなりたい。
総てを告白できる勇気が欲しい。
春彦の償いは今、始まったばかり。
“キィ・ワードを思い出させるために”
と輪から与えられた、ありすの覚醒を促す役目。
春彦はこの時“別の意味”でありすの覚醒を自ら願った。
『どうか、あの少女に、紫苑の孤独な心を伝えることができますように』
ぼくの地球を守って(文庫版)第三巻より、お伝えしています。
ぼくの地球を守って 感想と思うこと
ここでのあらすじで書ききれなかったことがあるのですが、未来路くんの登場の際にさらっと描写させていただいた田村さんの守護霊さんについて。
田村さんの身の危険を案じて、未来路に色々伝えてくる守護霊さんがいたのですが、その正体。
それは、田村さんの亡くなられた弟さんです。
とても苦しい思いをして亡くなられた弟さんで、ぼく地球のまだ先の巻で、弟さんの死の真相とかも出てくるのですが、残念ながらというか、その部分はこのあらすじの中では詳細の記載をいたしません(と断言しておきます。)
だって、語彙力失うほどかわいそうなんですもん。この命のお話。
そういう部分があるから“ぼく地球”の世界観の中に心持ってかれるという、本当は外せない一つの要素だと思うので、完璧にぼく地球の世界に浸りたい場合は、これ読んでる場合じゃないです。
全巻冒頭からちゃんと読んでください。ぼく地球の世界の住人になりたい、厨二病の筆者より♡
つづきは↓こちらです
ぼくの地球を守って あらすじ~vol.8~ ときどき感想