ぼく地球をまだ1度も読んだことがない方、ネタバレNGな場合におかれましては一刻も早くこの記事を離れて、【ぼくの地球を守って】正規の単行本をぜひともご覧ください!
ぼくの地球を守って あらすじ(ネタバレあり)~vol.9~
誰よりも強く故郷を欲している
そしてここは夢に描いた故郷そのもの
その故郷を守るために
人を傷つけ
己も切り裂いていく少年の旅路に
終わりはあるのか
手紙
春彦は自分を全面的に受け入れてくれる田村の優しさに、その信頼に応えるために、勇気をふりしぼって全てを告白する手紙を出した。
田村さんがあれを読んで知ってしまったら、紫苑はきっと田村さんに…
春彦と田村の関係性に気づきはじめた輪が、田村にまたどんな危害を加えるかわかったもんじゃない。
まずい…
手紙が田村の手に届く前に、自分の真実の全てを語ったあの手紙を回収、処分しなければならない。
京都までは遠い、でも…移動できないことはないはず。
…京都へ。
春彦は瞬間移動を何度も何度も繰り返し、手紙の行方を追って京都へ向かった。
ー 京都 ー
タカシが学校から帰宅すると、玄関の前にうずくまる春彦の姿があった。
タカシは自分の世話役である田村にとって、自分が一番でないと気がすまなかった。他のヤツの面倒をみてほしくないというのが本音で、田村が春彦を気にかけていることを、正直うとましく思っていた。
その春彦が目の前に…
「なんで、テメェがここにいるんだよ」
思わず悪態をついた。
見ると春彦は汗だくで、具合が悪そうに息を切らしていた。
春彦はタカシの姿を見るや否や
「ぼくの…田村さん宛の手紙…届いて…ませんか…」
タカシに“例の手紙”が届いていないか探してもらうよう頼んだ。
タカシはめんどくさそうだったが、自宅に届いている郵便物の中に田村に宛てた春彦が出したという手紙が混じっていないか確認した。
「無かったぜ、お前の手紙なんか」
…まだ届いてないんだ…春彦は、どうしようと青ざめた。
「用が済んだならとっとと東京へ帰んな!」
春彦とあまり関わりたく無いタカシは、春彦を追い返そうとしたが
「あの!もし、その手紙が着いたら、田村さんの目にとまる前にどうか破いて処分してください!!お願いします!!お願いします!!!」
春彦のあまりの懇願に気圧された。
手紙2
タカシは届いた郵便物の中から“例の手紙”を見つけた。
頼まれたからというより、田村が春彦からの手紙を楽しみにしていることにイラついて、その手紙を破りかけた。
その時、手から手紙がすり抜けた。
田村だった。
「事と次第によっては怒りますよ坊ちゃん。お見受けしたところ、これは田村宛てに来た手紙のようですが?」
タカシは慌てて春彦本人から処分を頼まれたことを説明した。
田村は春彦からの手紙を、春彦の抱える不安を受け取った。
約束通り告白します。
これから書くことは多分、僕の過去(前世)にあったことで、総て僕が7歳の頃から夢に見てきた事です。
田村さんならきっとわかってくれると信じます。夢の中での僕の名をシウ=カイドウと言います。
田村さんが見たと言った姿はたぶん彼だと思います。そして『S』と名乗る少年は、その夢の中ではシ=オンと呼ばれる僕の月の仲間の一人にあたります。
前世においても現世においても、僕は病魔に犯され、健康な人に対しての嫉妬の念に悩まされました。
『生』への渇望が異常に強かったシウ=カイドウという男は、その人生が中途で終わる無念を、『苦しみ』のみの『生』の中へ、一番憎んでいたシ=オンをおき去りにすることで晴らしたのです。
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お節介な干渉
桜(繻子蘭)は、気がかりだった。
紫苑が初参加した会合の日、春彦の発言について。
春彦の自殺未遂(だと見えた行動)あれは本当に事故だったのだろうか?
女の感と好奇心と、気になり始めると突き止めたくなる性格上、本人が喋れないなら周りに聞いてでもと、桜は春彦の事情を田村に聞いてみないかと一成(槐)にもちかけた。
一成は桜のお節介で非常識な干渉に「まだ言ってんのっ!?」とガチギレしたが、桜の行動を止めることができなかった。
一成と桜が田村の元を訪れると、田村は京都へ行っていて不在であると告げられ結局のところ無駄足に終わった。
桜は悔しがったが、一成は田村が不在であったことにほっとしていた。
桜が春彦(紫苑)について気がかりなのには理由があった。
それは月の記憶の中で、紫苑が中心となって起きた何か“大きな問題”のようなものがあった事象を断片的に思い出していることによるものだった。
「ねぇ、自分のキィ・ワード憶えてる?これがらみのイザコザがあった…と思うのよね…」
桜がはっきりと思い出しきれていない記憶について、まるで完成しないパズルの足りないピースを探すかの様に一成に問う。
「あんた、その辺のとこ夢に見ない?」
一成は答えた。
「うん、実は…思い出したんだ。この間…その、キィ・ワード」
彼女が木蓮である理由
いまだ月の夢を見ずにいるありすの覚醒を促す、輪はその役目を春彦に託した。
こちらからありすへのテレパスの送信、同調連鎖と呼ばれる働きかけをすること。
ありすに月の夢に反応させるための強制手段ともいえる方法だった。
ありすが一度だけ見たことがある月の夢。
それはまさに、輪がありすに同調連鎖を働きかけたことにより見せた夢だった。
輪が月でのヴィジョンを、紫苑のセリフだけありすに送信し見せた結果、ありすは木蓮であった記憶を呼び起こし、見事に木蓮にしかできない完璧な返答をした。
輪が、ありすは木蓮であるという確信を持っているのはそのためだ。
ただし、輪がそれ以降どれだけ同調連鎖を試みても、ありすは覚醒に拒否反応を起こす様になったのだという。
ー 紫苑は木蓮をひどく傷つけた ー
「ボクでは無理だ。穏やかな覚醒へは導けない」
だからこそ、春彦の力が必要だった。
春彦をありすに近づけなければならない理由だった。
何も知らないありすを浮かれさせた“あの約束”
『紫苑と二人だけで合わせてあげる』
これを機に、ボクは目的へまた一歩近づくことができる。
さぁ、行こうか
ありすの元へ。
「春彦は紫苑で、ボクは秋海棠。お互いの役を完璧に演りこなそうじゃないか!!」
輪は
紫苑との対面に期待し、胸を弾ませながら待ち合わせ場所でそわそわしているありすを大声で呼んだ。
「ありす!!」
ありすと春彦
ありすは、輪に呼ばれてドキッとした。
輪の隣で微笑んだ春彦に、俯いて顔を赤らめた。
「それではお引き合わせいたします。こちらが元・紫苑でいらっしゃる笠間春彦様。と、自称ファン第一号だとおっしゃられます坂口ありす様です。」
輪による、大人っぽく仰々しい対面の儀が執り行われた。
が、春彦とありすはこれが初対面ではなかった。
以前、デパートの制服売り場で偶然顔を合わせた、ありすが「紫苑さんみたい」と思わずみとれた相手であったことに、ハッとした。
春彦とありすは公園のベンチに座りながら取り留めのない話をした。
そして、ここでも「自分は木蓮ではない」と主張し続けていた。
春彦は、やんわりとありすをいざなう。
「全然関わり合いの無いはずのありすさんが、一度でも夢を見たなんて逆におかしい」
その様子をハタから見ていた輪だったが、春彦がありすに月の記憶の話を振るたびにフラッシュバックしてくる自身の鮮明な記憶に…
木蓮を傷つけた瞬間の記憶に目をつぶりたくなった。
抑えようとも込み上げてくる、えぐられる様な忘れられない感情に耐え難くなった輪は
「あとは若い者同士で、はははははははは」
おちゃらけてごまかし、春彦とありすを残してその場を後にした。
ありすは、思い出していた。
デパートで春彦に初めて会ったその時、ありすが春彦のことを「少し好みかな」と言ったその言葉に
『ありすと同い年で生まれたかった…こんなガキじゃヤダよぉ』
と顔を真っ赤にして泣いていた輪の姿を。
なのに…
急に、紫苑と二人で会わせてあげると言い、約束通り会わせて、しかも二人きりにさせるって…
輪くん…どうして?
その場から走り去る輪の後ろ姿に違和感しかなかった。
ありすは、輪の後を追おうとした。
「あの、すみません、あたし今日はもう帰ります。とても嬉しかったです。笠間さん、紫苑さんのイメージ通りで…」
春彦はありすを呼び止め、木蓮と関連する様々な事象を質問し続けた。
「歌うことは好き?」
「緑は好き?もしかしたら、植物の気持ちがわかったりとか、動物がそばに寄って来たりとか」
「小さい時に額に四葉のクローバーみたいなアザはなかった?今もある?」
ありすにとって、話していないことを言い当てられるものもあれば、心当たりのないものもあったが、自分を木蓮である前提で話を進められることに居心地の悪さの様なものを感じた。
何より今は、輪のことが気がかりだった。
「あの…あたし、これで失礼します」
ありすがその場を離れようとしたその時、春彦は咄嗟にありすの腕を掴んで確信に迫ったことを言った。
「輪くんをどう思う!?婚約したのは義務感からだけ!?」
なぜか恐怖を感じたありすは、掴まれた春彦の腕を全力で振り解いて逃げる様にその場を後にした。
ー その瞬間を ー
桜と一成が偶然にも目撃していた。
ぼくの地球を守って(文庫版)第三巻より、お伝えしています。
ぼくの地球を守って 感想と思うこと
桜と一成は、ものすごいタイミングの良い偶然の居合わせが多いですね。
月基地の7人の中で超能力者であったのは
玉蘭
木蓮
紫苑
秋海棠
そして、テレパシストの能力があったのが
槐とされていますが
もしかして、繻子蘭(桜)
未来予知でもできる力あったんでないですか?とお伺いしたくなります。
または事件の予感の嗅覚が鋭い。
女の感をばかにしてはならない、ということです。ねw
つづきはこちら↓
ぼくの地球を守って あらすじ~vol.10~ ときどき感想