ぼく地球をまだ1度も読んだことがない方、ネタバレNGな場合におかれましては一刻も早くこの記事を離れて、【ぼくの地球を守って】正規の単行本をぜひともご覧ください!
ぼくの地球を守って あらすじ(ネタバレあり)~vol.8~
誰よりも強く故郷を欲している
そしてここは夢に描いた故郷そのもの
その故郷を守るために
人を傷つけ
己も切り裂いていく少年の旅路に
終わりはあるのか
会合の目的
その日、ムーンドリームの会合に集まったのは、大介(柊)、桜(繻子蘭)、迅八(玉蘭)の3人だけだった。
一成(槐)は、迅八との“一件”から、会合どころか学校にも姿を現さない。
輪(偽りの秋海棠)は、体調不良。
ありすは自分は木蓮ではないと、会合に来る資格がないと言い張る。
月の記憶を持つ仲間である彼らは、集まらなければならない理由があって会合を開いているわけではない。
「3人だけで集まってもしょーもない!あたし今日はもう帰るね」
そう言い残して桜は、大介宅を後にした。
「ま、会合したからって何をするわけでもないもんな」
大介の発した一言で、今日の会合はお開きとなった。
家路につく迅八は大介が言った言葉に、一成も同じ様なことを言っていたなと思い出していた。
『別に集まったからって何かする目的があるわけじゃないし、今の生活があるんだから、前世にとらわれてるみたいなのってなんか間違ってる』
月の記憶が根源となって結果的にありすと一成を傷つけた迅八は、前世が玉蘭であった記憶を度外視しても、ありすのことを諦められないと、今のことを考えていた。
そして一成もまた、泣けてしまうほど玉蘭を諦められないでいる気持ちから解放されたくて『前世にとらわれてるみたいなのってなんか間違ってる』と自分に言い聞かせているのかもしれないと複雑だった。
「おーーーい!!待ってくれ、玉蘭!!」
突然、大介がダッシュで迅八の後を追って呼び止めた。
いつも冷静なはずの大介が、めずらしく息を切らして興奮していた。
「今…今さっき、君が帰ったあとすぐに電話があったんだ!紫苑からだ!!」
「えっ!????」
「東京にいるんだ!次の会合には是非来たいと言っている!!やっぱり我々は何か会合すべき運命なのかもしれないぞ!!」
その違和感の正体は
「じーんぱちっ、土曜までのノート貸せな!」
週明け、何事もなかったかの様に一成は学校に登校してきた。
それは全てを吹っ切って清々しくも見える様な態度だったが、同時に無理して押し殺している様にも見えた。
迅八は、結局のところ一成の寛大さに委ねる形で、今まで通り親友として接することができる様になった。
「紫苑が見つかった」
一成がムーンドリームから離れようと少し目を背けていた間に、驚きの展開になっていた。
7人目
月基地を共に過ごした最後の一人がついに現れた…そして来週の会合に来るのだという。
これには、さすがの一成も興味がそそられないワケがなかった。
一成はおもむろに聞いた
「それ、坂口さんも知ってるの?」
「さぁな。柊が秋海棠(輪)に連絡入れてたとしてもどうかな。」
一成はありすに直接聞いてみることを提案した。
迅八は、自分が今ありすに会うことはバツが悪いと、その役目を一成に託した。
一成がありすに紫苑の件を伝え、次の会合へと誘ってみたものの、やはり自分は木蓮ではないからと「行く資格がない」と断られて終わった。
「ねえ、輪くん…あたしに何か…隠しごとしてない?」
「してるよ。」
ありすは、紫苑が見つかったことについて輪にさりげなく探りを入れようとした。
「してるよ、それが何?」
まーったく悪びれる様子もなく、輪は答える。
ありすは頑なにムーンドリームの会合への参加を拒否し続けているが、紫苑に正直会ってみたいと思っていることが婚約者である輪にバレバレであった。
「一成くんに聞いたんだけど、紫苑さん見つかってたんでしょ?」
「見つかってたんじゃなくて、見つかったんだ、ついこの間。」
ありすが紫苑のファンであること知りつつ、すぐに話さなかった輪の行動は至って健全で真っ当である。
誰が好き好んで、自分の婚約者を自分以外の男に、ましてや婚約者が憧れている相手にわざわざ差し出すものか。
「ボクが会わせてあげるよ。会合じゃなく二人だけで」
え…?
ありすは困惑した。
…妬かないの?
「嬉しくないの?ボクはありすに喜んでほしいだけ」
と輪は笑った。
嬉しい…けど……
輪の言葉に、行動に、ありすは違和感しかなかった。
勇気の日
「お母さん、今日ぼくちょっと出かけてくるね」
春彦の声に母親は、新しい友達ができたのかと喜んだ。
今日はムーンドリームの会合日。
輪(紫苑)が描いたシナリオを実行する。
ぼくが紫苑として会合に参加し、それからありすと落ち合う。
ありすの覚醒を促し…そしてキィ・ワードを…。
言われた通りの指示をこなす“この償い”は、輪からの脅迫だからだけではない。
ぼくの願いも込めて実行に移すんだ。
『どうか、あの少女に、紫苑の孤独な心を伝えることができますように』
ただ、春彦は不安に押しつぶされそうだった。
みんなに嘘をつくこと、ありすに嘘をつくこと…
そんな時、京都に行った田村の言葉を思い出した。
『春ちゃん俺は、もっと強くなって帰ろうと思う。だから春ちゃんも新しい勇気胸いっぱいに蓄えといてくれ、な!』
春彦にとって、これ以上ない優しい言葉に後押しされ、今日この日に出そうと、したためた
田村への手紙を持って春彦は家を出た。
約束通り、告白します。
会合に訪れた春彦に大介(柊)と迅八(玉蘭)は、見るからに紫苑そっくりな春彦を一目見て
「そのものだ…!!」
と驚き歓喜した。
桜(繻子蘭)と一成(槐)は一瞬時が止まった様に固まって絶叫した
「えーーーーーーーーーっ!!?」
春彦もまた、桜と一成を見て言葉を失った。
“初対面”のはずの瞬間に意外な反応を示した3人に、何かを察した輪は
「えーってすでにお知り合いなんですか?」
と問う。
春彦が多摩川へ飛び込んだその時、ちょうど現場に居合わせた一成と桜。
ごまかしようがなく、この事情を話さざるを得なくなった。
春彦は言葉を選ぶ様に、ぽつりぽつりと話し始めた。
「あれは決して自殺しようとしたわけじゃないんです!事故だったんです。」
痛いほどの輪の視線を感じた。
「あの頃ぼく、夢遊病っぽくなってしまって、気がついたらそこにいて、足を滑らせたおかげで、こうして覚醒できたんです…!」
空気が重かった…
「ボクも気が弱い方だけど紫苑でもそんなことがあるんですね」
そう言いながら輪は微笑んだが、目が笑っていなかった。
そのあとは紫苑を交えた取り留めもない話を続けたが、春彦は終始生きた心地がしなかった。
アドリブ
春彦は「用事がある」と、みんなを残して先に会合を後にした。
桜(繻子蘭)は、本人がいないことをいいことに、春彦(紫苑)の主張する事故の話を再度持ち出した。
「あれ、事故だったと思う?」
「でも本人が事故って言ってんだし」
一成(槐)は、これ以上その話題を掘り下げることをためらった。
「だってなんだかスッキリしないんだもの。本人に訊けないなら、ほらあのカッコいい男、田村さん!!あの人になら訊けないこともないわよ」
「訊いてどうすんのさ!ぼく反対!!」
桜と一成の押し問答の中で出てきた名前を輪は聞き逃さなかった。
田村…
春彦は、この後ありすに引き合わせるという輪のシナリオの予定通り、待ち合わせ場所で輪が来るのを待っていた。
先ほどの会合の席で、おそらく輪が期待していたであろう立ち居振る舞いができていなかったことに、春彦は“ある程度”の覚悟を決めていた。
現れた輪は、案の定ご立腹の様子だった。
「本当ならこの後、木蓮に会ってもらいたかったけど、中止にするね。」
と、人気のない海へと春彦を誘導した。
「ずいぶんと派手にシナリオを変えてくれたじゃないか。自殺未遂だって?笑っちゃうよ?」
自分が見ていない時の春彦の行動がシャクにさわって仕方のなかった輪は、春彦を海の中に沈めて溺れかけさせた。
そして、春彦に田村との関係を問いただした。
「田村のおじさんと君ってどーゆう関係なのお?」
「何も話してなんかない!!」
「本当かなぁ信じられないなぁ。今度勝手に死のうなんて考えてごらん?最愛の田村くんをボク横取りしちゃうかもしれないよ?」
そう言い残して春彦の前から輪は姿を消した。
何も…話してなんか…
まずい…。
手紙…
全てを告白したあの手紙を…田村さんに…
出すべきじゃなかった…っ!!
ぼくの地球を守って(文庫版)第三巻より、お伝えしています。
ぼくの地球を守って 感想と思うこと
春彦がやっとの思いで勇気を振りしぼった会合参加の日、残念ながら自体は悪化の一途を辿るわけなんです。
現段階でルンルンしてるのは、ありすだけです。
お気楽なもんです。
知らない方が良いってことって世の中にはいっぱいあるじゃないですか。
ね?
揉み消された事実とか、いっぱいあるじゃないですか。
ね?
その点で言うと、残念ながら(?)ありすがルンルンしてられるのも今のうち…です。
がんばれよ、ありす!
つづきは↓こちらです
ぼくの地球を守って あらすじ~vol.9~ ときどき感想